2007年11月4日 八十里古道散策(木の根峠より)

 新潟市Y氏、小千谷M氏を誘い、7時55分から木の根峠入り口より歩き始める。
「古道入り口」と書かれた木製の老朽化した道標は、あまりにも無造作で無責任で、まるで迷宮への入り口の誘いのように佇んでいた。
数年前に、5分ほどここから入り尾根筋を歩いた記憶を元に踏み入る。尾根は爽やかに風が通り抜け、晩秋の佇まいが木の葉と共に吹き抜けている。
古道のアバウトな地図を確認すると、この先の尾根道の途中から左に折れた古道が記載されている。しかし、それらしい感じの痕跡はなく、ひたすら尾根を歩きピークを目指す。
ピークらしい場所に着き、眺めは良くなった。右手を見ると、谷地が見えた。すでに枯れた葦が群落となり寂寥感が漂う。ここは大白川区民は『アカワタシタ』と呼んでおり、左沢谷地とは別の谷地である。
左下を見ると、葉が落ちた風景の中に、八十里越えの新道の山道が確認できた。
私達が居る尾根は古道ではないと思われたが、既存の鉈目は所々にあった。残雪期にここを攻略する人が居るのであろう、古道の位置をおおむね把握した藪愛好家が、敢えて尾根筋を通ったが故の鉈目であろうと推測する。
 しかしながら、所々昔の山道と思しき明白な箇所もあり、山道専用として切り開かれたものなのかも知れない。それを推測する要素として、尾根筋に等間隔で桜の木が有ったことが印象的だ。これはどう見ても天然モノとは思えない。
 尾根筋の道がしばらく続くが、尾根は次第に広くなってくる。矮生の貧栄養を好むツツジ郡は消え、リョウブ群に変わる。依って藪は酷くなり鉈目も皆無となる。目印を施していると再び忽然と鉈目は現れたりする。まさしくこの現象は残雪期を歩いた証拠であることがわかる。雪が付いている所に鉈目は無いからである。
 帰りの事も考慮し、目印を付けたり鉈目を入れたりしていたので、あっという間に11時を回ってしまった。県境線1004m手前の左沢谷地やエコミュージアム、ネズモチ平駐車場が見える眺めの比較的良い場所で昼食を摂ることになった。3時間歩いても未だ左沢谷地や、エコミュージアムが見えるなんて・・、遅々とした歩きに苛立ちさえ感じるが、もともと今日は古道散策と菌友会の研修も兼ねての山行きである、人気の無い、歴史のひとこまにほんの少し入れる事が出来る環境に感謝したいと思う。
昼食を摂っている場所が、1004mでない事は明白だった。ここで宴会し、ただ帰るだけではあまり意味が無い。私1人だけ空身で取り合えず1004mまで行ってみることにした。
尾根の頂部にヌマガヤのような枯れた植物が生えた所があった。人の手によって刈り払われ、そこにイネ科の植物が入り込んだものであろうか。推測することが面白い。しばらく行くと一箇所だけ布製の赤布が巻かれていた。昼食を摂る場所までは、アバウトな広い間隔でナイロンテープ゚が巻かれていたが、赤布は初めてである。ここから先は如何なる場所になっているのであろうか?と期待は高まる。
しかし、期待は外れ、雑木林となったが新しい鉈目も確認された。
1004mと思われる場所から、1010.5m pの位置を確認し、昼食地点に戻ることにした。
昼食地点で再び休み、Y氏からウイスキーを少し貰った。
小千谷のM氏は、最初から菌ハンターとなり、あまり無いなと言いながら、かなりの量を既に確保している。
 この後、私の提案で、尾根筋から直下し八十里新道に下ろうと提案した。このまま下れば厭でも新道に下ることは間違いないし、キノコも採れる可能性も大であるとの判断である。
下り始めると早速クリタケが現れた。M氏が欲していたクリタケの参上で、この先のキノコハンティングも期待が持てた。他にもムキタケ・ナラタケ・ナメコ・チャナメツムタケなど、優良な食菌が沢山見られた。しかし、1週前に誰かの手によって採取された痕跡もあり、量的にはまずまずの域を出ない。
少し下ると段があった。ここは未だ新道ではない筈で、ここが我々の探していた古道なのかと喜々とする。
ザックをデポし、逆方向へと探索することにし、向かった。歩き出して直ぐの所に40年以上前と思われる『河井道』というブナの木に彫られた文字があった。古道が建設されたのは、江戸時代であり、江戸の彫り物ではあるはずもないが、ここが古道であるのはほぼ間違いなさそうである。上に登ると明確な九十九折の道となるが、平地となった途端道型は不明となった。
M氏・Y氏と合流し、そのまま木の根峠に向けてキノコでも採りながら古道を歩くことにした。古道は荷車が通れる十分なスペースが確保され、広さは十分にあったが、手入れが殆どされていないためエゾアジサイやミズキなどの木本が多くあった。ただ、相当古いものと思われる、苔生した鋸目やペンキを塗ったと思われる木も幾つか見られた。
最初からキノコ目になっているM氏、キノコを見つけるのは実に早い。『またキノコを採ってきてお袋に怒られるなぁ』とボヤキながらも、とり憑かれたようにキノコを採っている。
途中、やや不明瞭な所もあったが、元の古道入り口に着いた。
八十里古道は確かに存在しているはずだ。八十里古道に限らず、物事の真実は必ず存在しているはずであると思う。

八十里山道入山地点7:55  木の根峠(古道入り口)8:15  900m付近8:40
昼食地点1004mピーク500m手前11:15  1004mピーク12:00  昼食地点発12:30
古道入り口14:45  八十里山道入山地点15:05
今回のコースタイムは途中での停滞等の時間も多くあり、あくまでも個人的なデータである。

 家に戻り、Y氏を誘い本日の反省会と今後の八十里古道の攻略法を飲みながら相談した。
次回、この道を用いれば、かなり前に進行することは可能であろう。

Y氏とM氏 画像を撮り込むY氏(先に見えるのは鞍掛峠)
忽然と現れる明瞭な道形 古道にあった彫り物
もくもくと菌と戯れるM氏 思わず撫でたくなるつるつるナメコ

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