2009年4月19日 太郎助山

 毛猛登山を目指すお客様Yさん(・・・以下Yさんと記載する))と足沢ルートで行くことにした。特に予定もなく10日ぶりの登山なので行くことにしたのである。 Yさんは毛猛ピストン日帰り14時間を見ているとの事であったが、相当厳しいと考えていた。
 地元住民ということで、一応奥まで車を入れさせて貰い、足沢のJR鉄橋手前で駐車した。我々以外に同じ場所に1台、別の場所に2台あった。
 Yさんと4:45に出発した。いつもの取り付き部分は法面が急で雪もないので、トンネルに近い国有林の境界杭の所から取り付く。
予想通り、この斜面にはまったく雪は付いていない。542を通過し、その上の広い緩やかな尾根に着く。ここからは雪がわりと有り、762までは何とか雪が拾えた。762で雪の付き具合を見るとまずまずに見えた。
 Yさんは2年前にうちに泊まり毛猛を目指したのだが、足沢山手前の痩せ尾根で体調不良になり撤退した経緯があったようだ。Yさんは過去に登山で大事故に遭い、多々な恐怖心が湧き上がってくるのだという。
 762から足沢山までは、尾根歩きのため、基本的に雪歩きは難しい地形である。淡々と登るしかない。この淡々と登る、一種時間の無駄に思える行為は、登山特有のものである。足元を確保し、目の前の潅木をすり抜け、一歩一歩高みに向かうのである。なぜ苦しみを求めてまで、こんな単純な作業をするのであろうかと考える。それは、人が呼吸や鼓動を通じ自我を確認するための行為ではないかと私は思う。
 足沢山には約3時間要した。この段階で毛猛まで行くのは断念となった。とりあえず、太郎助山まで行きましょう、太郎助山に行けば毛猛も見えるし、素晴らしい荒々しい景観が見れるでしょうとYさんに言う。
 足沢山に着くと、コルに大きなテント幕営があった。遠く太郎助山直下を見ると、4名ほどの登山者が歩いているのが見える。土曜の午前中昼頃の出発で、足沢山で前泊し今日毛猛を目指すのであろうと察する。足沢山先の内桧の分岐下の鞍部にも小さなテントが張ってある。
 足沢山から数100mは、快適な雪場歩きを堪能し出来た。その先は効率的なへつりとは言えず、また、Yさんの希望もあり、安全に尾根を行くことにした。尾根だからイコール薮ということでもなく、半薮状態の『道』があり、特に大藪というジャンルではない。
 内桧JC 鞍部に着くと小さなテントがあった。1人用なのであろうか、無理すれば2人でも寝れそうではある。ロープの結びなど教科書どおりの結び方で、ペグも鉈持参で手作りだった。しばらく上に行くと、テントを片付けている御夫婦がいた。約10年毛猛山塊に通っているが、「こんにちは」という挨拶をするのは初である。Yさんが持ってきてくれた岳人のコピーを見ると毛猛山のガイド記事が載っていた。そのせいであろうか、この土日に至っては車は正式に入ることが出来ないにも拘らず幕営が3張りあったのである。
 御夫婦は太郎助山まで行ってきたと言う。表情から察するに、かなり厳しかった、という表情をしていた。勿論易しい山ではないと思う。
 雪をへつる時は、多少非効率的であっても拾うのが自分流だが、今日はYさんが主役であり、あくまでもYさんの意思に従ってのルート選定となる。しかしながら昨年の5月10日の地獄の薮山行に比べれば、雪もそこそこ拾えるし、十分楽な設定である。
 太郎助山直下の急登を過ぎると、今の時期は逆に雪が多くて、スムーズに行けるルートは、急傾斜な場所のみとなる。ただ滑落すればかなり下まで行くと言う設定であった。Yさんは恐怖心が厭だというので、色々ステップを刻んだりしてみるがうまくいかず、結局御夫婦が選定したミニクレバス通過の部分を行くことにした。そこを越えれば、そこそこ雪提もあり何とか目標の太郎助山まで着いた。太郎助山着は11:15だった。
 Yさんは、改めて毛猛山は大変な山であると認識をされたようである。標高差も毛猛山と大差ないし、素晴らしい山並みを見、十分満足したと言っていた。御年73歳日本山岳会も長く経験され、300名山踏破、他にも外国の有名な山にも何回も行っておられるとか・・・・なにせ、山暦は57年だという。
 30分ほどゆっくり休み、名残惜しい太郎助山を後にした。テント泊の登山者は未だ毛猛の折り返しをするでもなく、稜線には姿がなかった。
 足沢山から下り始め、762近くなると7名ほどのパーティーが内桧分岐下のトラバースをしているのが解った。午後3時を過ぎていたので、もう1泊するのではないかと結論付け、私たちはゆっくり下り、只見線の時刻を考慮し17:15分頃着いた。
 Yさんは、残念ながら夢の毛猛山に立つ事は出来なかったが、太郎助山だけでも相当な達成感を得られたようだった。
 

762から足沢山
762から太郎助山
762から足沢山
太郎助山山頂よりやや下部からの、百字ヶ岳の山頂付近の雪の付き具合
太郎助山から見る 左毛猛山 中央中岳 右百字ヶ岳
太郎助山から見る惨憺たる足沢の雪のなさ

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