10月6日 八十里越え

網張り林道5:10  吉ヶ平分校5:30  雨生ヶ池分岐5:50  椿尾根6:45  椿尾根発6:55   番屋乗り越し7:55
火薬跡8:40  高清水沢9:35  高清水沢発9:45  鞍掛峠11:15  鞍掛峠発11:20  田代平12:10  田代平発12:30
木の根峠13:05  松ヶ崎13:50  化け物谷地14:45  ナメ沢14:50  ナメ沢発15:00  八十里越え入り口道標着15:40
計10時間30分(最小休憩時間で対応)

 新ハイメンバーのDさん5名一行と、早朝車で宿を出る。
今日の行程はいつもながらの吉ヶ平発の入叶津下山である。
入叶津には人をお願いし、車を登山口まで回していただくことにしていた。
その為には、国道の工事用道路を進入しなければならず、色々書類上の段取りが必要であった。
 暗い夜道を走り、近道をし、いよいよ吉ヶ平への細い道に差し掛かるとき、状況の異変に気づいた。
なんと、吉ヶ平への入道が工事の為禁止され、堅牢なゲートが施され施錠がされている。
一瞬、頭が白くなったが軽車両が何とか通れる位のスペースが確保されていた。
しかし、誘導してもらわないと極めてシビアな間隔であり、一人では難しい。
 網針林道の脇に車を止め、Dさん一行と準備をする。
幾人かがヘッドランプを点け、自分も装着し、出発。
数十分歩くと吉ヶ平の分校に着く。
既に明るくなってきており、ヘッドランプを仕舞い身支度を再度整える。
雨生ヶ池分岐に着くが、分岐のどちらも人が踏み入った痕跡はないようだ。
杉の植林された薄暗い箇所に、昨年話題になったスギヒラタケがあった。
彼らはしばらくは、子孫を順調に伝えて行く事が出来そうだ。
 7月の末に歩いた際には、吉ヶ平から番屋乗り越しまでは手入れがされていた。
しかし、あれ以来、秋の植物のイヌタデやらミゾソバ、チカラシバ、キンミズヒキなどが繁茂し、かなり山道を覆っている。
それでも、一回手が入っているだけでも随分助かる。
椿尾根に着いた時には、私達の衣服にそれぞれ沢山のキンミズヒキやヌスビトハギが付いていた。
椿尾根で大休止し、朝食を摂る人は摂ったりする。
今後のコース概要などをDさん一行に説明し、番屋乗り越し目掛けて出発する。
 崩壊地の遠巻き、高巻きを程なく通過し杉の立つ山ノ神へ。
山の神を過ぎれば間伐されたようなブナの二次林を抜け、番屋乗り越しへ着く。
ここでは軽く小休止くらいにとどめ、ここからおそらく手が入っていないであろう山道の事を考え、早めに出発する事にした。
山道は強烈な草薮が予想されたが、以外にそうでもなく手が入っているような箇所もあり一瞬期待する。
しかし、アカソ・クロバナヒキオコシ・エゾアジサイなどに遮られ、ペースはやはりダウン。
ただ、参加メンバーの人選もしっかりと行ったようで、タイム的には問題にならぬ程度のペースダウンにとどまっていた。
 景色は粟が岳の頭は雲をかぶっていたが、それがかえって絵になり素晴らしいロケーションとなった。
何とか見える程度の火薬跡の道標をカメラに収め、これから下る旨コースの概略を伝える。
火薬跡からの下りは、時折日光が入って来るところがあり、そこは草が繁茂している。
その辺が解りづらくなっていた。
 平らなブナの林は、大きな広さがあり、息苦しいような草薮からのしばしの開放感を皆が味わう。
道の地面を何やら穿ったような痕跡がある。
話題は熊に集中するが、狸であろうと思う.
小沢を越え、ブナ沢の渡渉であるが、ここで少し水が靴に浸入した方もいた。
ブナ沢からの道も草に目いっぱい覆われていた。
しかし、釣り人であろうか沢から踏み跡があった。
時折、藪道に見られるサルナシを見つけ、皆で山の幸に舌鼓を打つ。
草薮が多くても、こんな余裕があるのは嬉しい。
 高清水沢手前の道はいつもはまっすぐ行くのであるが、今回は全6名なので高巻き道を利用する。
高清水沢は水がなかった。どこか別の地下にでも入ってしまったのであろうか。
ここでしばらく休憩し、メンバーの方々から美味しいおやつなどを頂き御馳走になる。
 この頃から私の足は重くなり、あまりペースが上がらない。
草薮通過で足が必要以上の緊張を強いられた為であろうか。
空堀小屋跡、空堀分岐、桜の窟、殿様清水と各道標を過ぎてゆく。
殿様清水までも、相当な草薮であったが、足元がしっかりしているのでさほど苦にはならない。
鞍掛峠はもうすぐと言うところまで来たが、ここからは最も藪が酷いところなのである。
幸いにして釣り人かキノコ取りであろうか、オオイタドリやシシウドに鉈目が入っている。
一部木の全くない箇所があり、条件の良い時でさえも道型が解らなくなる箇所があるのだが、そこらへんの事情も踏まえた人であろうか、そこそこオリジナルな道に近いところに鉈目を入れてあった。
その鉈目も疲れたのであろうか、全く手が入らなくなり、草を掻き分けて確認しながら進んだ。
鞍掛峠の鞍部の明るさが近くまで確認でき、あと一息で峠に着く旨Dさん一行に伝える。
 もう長い旅は終わったかのような達成感があった。
遠く川地山塊や万人のハイキングの山、袴腰山も見えた。
軽く休憩し、田代平にてゆっくりランチとすることにし、出発。
まさに天と地、藪漕ぎと高速道路などと揶揄しながら、対照的な山道を進む。
晴れてはいるものの、不安定なのか、守門岳袴腰ピーク付近は雲を蓄えていた。
烏帽子山の鋭鋒と、鞍掛峠からの稜線ははっきりと見えている。
入広瀬の代表的な山である、守門山塊黒姫はしっかりとスダレまで見えている。
浅草岳は、裾野だけは見えているが、1000m以上は雲の中であった。
6月にはヒメサユリの咲き乱れるガレ場では、オヤマリンドウがあった。
 田代平湿原はひっそりと静まり返り、秋の佇まいがあった。
平らな湿原に生息する樹木は、太陽光線を浴びやすく、寒暖の差の影響を受けやすい。
よって、湿原などの矮生な樹木の紅葉はやや早い。
それらの紅葉と湿原のヨシや、ヌマガヤがマッチし、絵になる景観が生まれていた。
 約20分ほどの短いランチタイムとなったが、まだ先は長いので、草々に出立することにした。
車道を少し歩き、再び山道へと分け入る。
木の根峠に着き、いよいよ会津へと・・とEさんは感慨深げに歴史を楽しんでいる。
ただ単にトレックをするのではなく、歴史ある街道を歩くことによって当時を偲び想いを膨らませる。
不可能な過去の世界へ、少しでも到達しようとイマジネーションに拍車を掛けるべく旅をする・・・そんなところであろうか。
 木の根峠からは基本的に単調な山道である。
しかしながら、数箇所侵食された沢を通過する所があり、変化はそれなりに楽しめる。
松ヶ崎で休憩とする。
ここから大麻平らまでは道標などは一切なく、淡々としているが、ブナの原生林が美しい気持ちの良い山道歩きとなる。
迎えを午後4時に依頼してあるので、少しピッチを上げる事にした。
最後の休憩をし、私は後尾に付きデジカメ撮影する事にした。
 この八十里トレッキングは、吉ヶ平スタートの場合、難所通過があり、大変なコースである。
しかしながら、木の根峠からの一連のブナの原生林を眺めながらの素晴らしい景観は、歩いて良かったと言う気がする。
どんな気持ちの時にもこの空間(森の精霊宿る)は癒される。
木の根峠から入叶津までの間だけでも、行く価値は十分過ぎるほどである。

15時40分、10時間30分八十里入り口の道標に全員無事到着した。
Dさん曰く、5年越しの八十里踏破であったとの事。感慨は格別であったと思う。
私も、そういう想いを果たせるお手伝いがついに出来たという達成感に包まれた。
 新しい国道が出来、この古い山道は淘汰されつつあるのかもしれないが、今後自分に出来る範囲内でできる事をして行きたいと思っている。

ゴールは近い、山道を歩くDさん一行
肉眼ではもっと素晴らしい、幽玄なブナの原生林

トップへ
2005年山歩きへ
山塊別山行き記録へ