7月3日 八十里(吉ヶ平山荘〜入叶津)

吉ヶ平山荘6:47 雨生池分岐(h470m)7:02  椿尾根7:52
山の神8:30  番屋乗越し(h895m)8:45  火薬跡9:16  小沢9:32
ブナ沢9:42  高清水沢10:00  高清水沢発10:17  空堀小屋跡10:25
丸倉分岐(空堀h765m)10:29  桜の窟10:40  殿様清水10:52
鞍掛峠11:30  小松横手11:52  田代平湿原(h965m)12:20
田代平湿原発13:00  木の根茶屋跡(h845m)13:30  松ヶ崎14:02
松ヶ崎発14:20  湿地14:50  沢14:56  八十里入り口15:45  入叶津浅草岳登山口16:45

朝5時30分に、大白川を3名で出発。
メンバーは、地元の平井氏、小千谷の森山氏と私の3名。
前日、平井氏が浅草岳入叶津登山口に車をデポしておいた。
平井氏は、浅草岳登山口から只見駅まで徒歩し、1人でご苦労していただいた。
但し、この平井氏、荒沢岳を2時間半で登るというのだから、この程度の徒歩は食後の散歩程度なのだ。


 吉ヶ平山荘は、ある時期から無人となり、静かに佇んでいる。
平井氏のアドバイスにより、随分と合理的な道を辿り、1時間強で吉ヶ平に到着した。
3人ともバラバラと歩き始める。
吉ヶ平と呼ばれるように、平らな場所が有り、程よい空間が長い年月によって作り出されている。
この辺に集落でもあったのであろうか、昔を想像して想いを巡らす。
巨大なイタヤカエデの樹が数本有り、幽玄な質感を保ち、サンコウチョウの声も聞こえる。
かつてこの森を神社などにし、人々が集まった場所なのであろうか。
時は確実に経過し、過去の風だけが漂っている。

平らな所に出ると、雨生池の分岐がある。マオイガイケと読むそうだ。
今日は不思議に3人とも、手帳を準備し書き取っている。
これから至ろうとする鞍掛峠方面は、巨大なオオイタドリで覆われ、
目いっぱい朝露のシャワーを浴びる事が出来ると予想された。
この分岐を過ぎてからも無理矢理四駆の車を掻き入れた跡がある。
回りは立派な杉があるから、それらの管理で立ち入ったのかもしれない。
大木の杉林を過ぎると、一帯は地滑り地域なのか殆どがススキや雑木で覆われている。
よって、日照が良い為、道はすっぽりと草に覆われ、道を探しながらの歩きとなる。
雨具も着ていないため、ほぼぐっしょりになり、長靴の中も水で飽和されてくる。
平らな山道は終了し、幾分分岐のような地形が現われる。
簡単な手書きの道標が有り、左手番屋山方面に鞍掛峠・・と明示されている。
5年程前に、おそらくであろうここで間違い、守門川添いに下ってしまったと考えられた。
全くこの辺はことごとく草が多く、殆ど手入れはされていないような感じである。
草付のシャワーを浴びながらどんどん登って行くと、平らな樹林帯に着いた。
椿尾根である。椿尾根は番屋山直下南西の750m付近であろうと思われる。
そこからは比較的気持の良い、坂も無い広い山道を歩く。
途中山の神と言う場所を通り、番屋乗越しに到着した。
番屋乗越しからは、進路を南にとり、急な横へツリの山道となる。
雪のブロックの移動によるものらしい、土砂の崩壊が何箇所か有り、泥濘も多い。
山道が難所を避けて新しく移動している。
残雪期にこのコースを歩くのであれば、ここは通らず左手上の緩い尾根を通過せざるを得ないだろう。
横へツリの山道の途中から、烏帽子山などが一望できる場所に着く。
そこをしばらく行くと、火薬跡と書かれた場所に到着。
東側には国道工事が行われ、ダンプや重機の音が鳴り響いている。
ヘツリを終了すると、今度は沢に向けての下りとなるが、この道が広く素晴らしい。
ブナの原生林が広大に広がり、まるで手入れされているような状態である。
25000地図のブナ沢手前の765m付近の平らな地形の箇所がそれである。
幾度となく、感嘆な声を発しながら歩いた。
ブナ沢を渡渉し、しばらく進むと虎ロープによるバリケードが施されてある。
こういうものが無ければ迷ってしまう可能性がある。
ブナ沢を渡り、いくらもしないうちに大きな沢に出た。
烏帽子山から流れ出る高清水沢である。
ここでしばらく大休止する。
高清水沢を出発し、なだらかな地形となり、気持ちの良い歩きとなる。
藪の中を動く生き物・・サルの家族が居た。
この辺で生活しているようで、さほど警戒心も無いようだ。
サルを見た直後、丸倉分岐と書かれた場所に着いた。
25000地図を見ると五十嵐川上流に栃中瀬沢が有り、その辺から山道は延びて来ているようだ。
この山道を辿り、八十里越えを歩く人も居ると聞く。
ちなみに、前出した丸倉分岐は、「空窟765m」と明示されていた。
この後、細かに「桜の窟」だの、「殿様清水」だのほぼ10分おきくらいに道標があった。
この辺の地形は平地であるが故に、雪も多く、昔は湿地であったと考えられる。
ブナは無く、ミズキなどが多い。
そこにミツバアケビやヤマブドウ等のマント群落となっているために、なかなか進化しないようだ。
山道の傍らには、バイケイソウが地味な緑の花を付けている。
オオイタドリは、全く大きくそのものズバリの語源である。
鞍掛峠手前には、若干の雪渓も残り、山菜も未だ残っていた。
丸倉分岐(空窟)が765mで有り、鞍掛峠は970mである。
200mの登りであるのだが、遠回りし、迂回しているので、全く標高を稼ぐ意識は無い。
最後、一足二足急登を登り、なつかしの鞍掛峠に到着した。
この辺は勝手知ったる何とやらで、いささか食傷気味の山道である。
高清水沢で軽く食べ物を胃袋に収めたものの、本格的な昼食は未だであったので
田代平湿原で昼食を摂る事にした。
田代平湿原ではトキソウが咲き始め、後1週間もすれば花盛りであろうと話す。
ここでゆっくりと濡れた靴下を乾かしたり、森山氏持参の発泡酒を馳走になったりした。
宴たけなわであったが、午後1時に断腸の思いで出発した。
木の根茶屋跡を過ぎると、同じような地形の山道が続く。
視界が開けた場所に着く、松ヶ崎である。
松が一本有り、北に木の根沢が見え、沢左岸が岩稜の尾根が続いている。
松ヶ崎からは全く道標も無く、ひたすら歩く歩く・・ただ歩くのみである。
ただ、ブナの原生林は素晴らしく、ほぼ極相(クライマックス)に近いものだと考えられた。
林床には、オオバクロモジや、オオカメノキが有り、まさに教科書どおりで、野鳥の種類も豊富のようだ。
田代平湿原から3時間弱で八十里登山口に到着した。
しかし、ここからがむしろ大変であり、ひたすら我慢の車道歩きを小1時間こなした。
 振り返ってみれば、吉が平から椿尾根〜番屋乗越し辺りに若干の急登が用意されていたが、
後は殆ど登ると言う自覚症状は感ずる事も無く、楽な山旅であった。
ただ、さすがに田代平〜入叶津にかけては多少嫌気がさしてきた。
最後の車道歩きは止めを刺された。
 このコースは、バードウオッチングをしたり、ゆっくりと2日掛けて歩くのには最適なコースであると思う。
昨今、守門浅草を1泊2日で歩く人も多いが、この八十里もそういう意味では面白いコースであろう。
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2003年山歩

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