4月18日 鬼が面山山塊村杉沢ガッチ(北岳)

シシ山が既に10日から始まっており、今日は何とか参加できる段取りとなった。
音松荘を過ぎると広場があり、いつものメンバーが揃っていた。
挨拶を交わし、昨日と一昨日の内容をざっと把握する。
どうやら上部は、鬼が面山〜北岳に掛けてから、下は夕沢林道を境に、
その範囲内に2頭ほど居る模様であった。
シシ山では、私達は40を越えているが、若手である。
若いという事は、ベテランから言わせると「足が強い」という事になるようだ。
今回、ベテランのAさん、Hさんに同行し、一番上まで行くことになった。
Hさんは、昨日寝不足だったらしく極めて体調が悪いらしい。
Aさんは、冗談とも本気とも付かないことを平気で言ってのけている。
「俺は、医者にあんまり無理せず、安静にして居ろと言われているんだ」・・・と。
すかさず、私が「シシ山にでも行って、安静にして居ろ!ってこっちゃあねえケ」と恐れおおくもジョークを飛ばす。
現実的には、医学的にはそうなのかもしれないが、シシ山になれば関係無い。
なにしろ、守門岳の裏を私を引き連れ、シシを追いながら走る人なのだ。
 標高800メートル位まで登り、ザックを置き、眺めに入る。
多少風が有り、少し寒く感じたので、使い古したヤッケを着る。
昨日、一昨日と東京出張であり、このシシ山の現実とは大違いだ。
駅のプラットホームでは、携帯電話を持つ若者が数え切れない。
湿度が充満した温室のような東京は、僅か2日の東京は私を大いに肥えさせた。
空気はまずいとは思わないが、とにかく圧力が凄い。
まるで、怪獣が大きなほうきで、人間をあちこちに吐き出すかの如くに移動させられてしまう。
山の上に居ると、そこには空間がある。
ここには、気が遠くなるほどの自由が有る。
ここで死ぬ事もできれば、生きることも・・。
自分に話し掛け、自分を見ることもできる。
若い頃は都会が好きだった。今は、いつもこの、山の空気に触れていたい気がする。
双眼鏡を眺めながら、皺の部分だけ白いAさんの横顔を見る。

午後になり、風が止んだ。
気温がぐんぐん上がり、熱い・・・本来は暑いのだが、今日は、熱い!
紫外線はきつく、肉眼で景色を眺めるのは難しくなってきた。
総勢8名のシシ山パーティーの面々は、それぞれ数キロの位置関係を保ち、2名から3名に分かれて眺めを行う。
イヤホンは何も音が無い。
「まんま食おうゃ」Aさんが言う。
この言葉には、深い意味がある。
これからシシが発見されれば、目も眩むような激しい行動が待っている可能性があるのだ。
そのために、食う時はしっかり食っておかなければならない。
 Aさんと共に、さらに上部に上がり、村杉沢ガッチが目の前まで迫ってきた。
すでの午後の3時半を回っている。
シシ発見できず・・ゆえに撤退・・連絡を受け、帰路に着いた。
破間川ダムは雪も消え始め、タムシバの蕾も膨らんでいた。
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2003年山歩