12月1日 浅草岳

本来ある筈の雪が無い。
よって、カンジキトレッキングは中止とし、代わりに浅草岳に行く事にした。
Kさんはじめ4名のお客様と大雲沢ヒュッテのバスに乗り、出かけた。
天気は生憎曇りでありガスが充満していた。
ホテル大自然館を過ぎると「冬季間交通止」とバリケードが施されてある。
バリケードの横を通り抜け、冬枯れのアスファルトを抜けて行く。
田代平の入り口には、石積みがされ、通り抜けできないようにしてある。
10月の初旬に、この入り口から100mほどの箇所が決壊しており、車は入れない。
代わって、その直ぐ上辺りから新たに道が切られていた。
勿論未だ完成されていないので、通り抜けは不可能だ。
アスファルトの周辺に目をやると、矢鱈樹の葉が無い為かすっきりしている。
何処もかしこも葉っぱがなく、何処までも何処までも視界が利く。
 
ネズモチ平の新駐車場は、ひっそり閑としていた。
11月の初旬まで週1回トイレ掃除に来ていた頃に較べると、ひとけはない。
管理棟は、落し板がはめられ、看板は取り外され、ゲートも除去されてある。
そこを通り抜け、さらに桜曽根まで車を進める。
桜曽根には勿論だが私たちのみだ。
「行ける所まで、行ってみましょう」と誰ともなく言い、歩き出す。
皆それぞれ、山歩きはベテラン揃いのお客様たちである。
最近、自分自身が体力的に自信を失っているので、そっちの方が心配だ。

お客様からの色んな質問に答えているうちに息が上がってくる。
最初は肌寒かったが、徐々に暑くなり、汗がにじみ出てくるのがわかる。
少々汗ばんでくると、何やら体が軽くなってくるような感じがしてきた。
嘉平与のボッチの手前の小ピークで大休止する事にした。
嘉平与のボッチを見ると、ガスが薄らいできており、心持ち期待する。
 しかし、ガスは切れることがなかった。
前岳近くになってくると風も冷たくなり、雪もちらほらと見えてきた。
この間の連休辺りの雪であろう。
あの時であるならば、30cm以上の積雪が有った筈だが、
今となってはザクザクと感触を楽しむにとどまっている。
もはや、浅草岳は深い寒い冬を覚悟しているかのように、眠っているようだった。

山頂で、手をあわせ、皆それぞれの心の神に手を合わせている。
合掌する事の良さは、心が敬虔な気持になる事、素直な気持になる事、
だから祈るという行為は無駄ではないとされている。
決して神の存在を云々するものではなく、自分の心を平易に保つということなのであろう。

下りながら、色々と楽しい話を聞いたり、おしゃべりを楽しんだ。
しゃべるということは、心を開く事なのだと思う。
久々に私は、饒舌になっていた。
これから、とてつもなく厳しい冬を迎える浅草岳の頑なさに圧倒され、
それを少しでも和らげようと、自分を誤魔化す為に多分饒舌になっていたのかもしれない。
 ドンちゃん騒ぎの、臍踊りの色合いはなく、山はしばしの山そのものの様相を呈していた。
浅草岳はお手軽なコンビニエンスストアーから、屈強な専門店へと変貌して行くのだ。

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