9月10日 大鳥沢〜前毛猛山(単独

思いがけず、空き日となった。
7月に1回行っていた、大鳥沢から前毛猛山を目指そうと向かった。
最近、ずっと面白くないことが有り、気分は最悪であったが、
家に引きこもればもっと憂鬱になるので出かけたのである。
9時25分に大鳥沢の入り口に車を停めた。
駐車スペースには、いかがわしい本が破り捨てられていた。
沢の入り口は、7月に較べると、著しくススキが伸び、背丈以上になっている。
歩き始めてしばらくすると、30メートルほどの滝がある。
その手前に巻き道が有るので、そこを登る。
周りを見渡せば、ヌマガヤやガリヤスの開花とみえ、花粉が目の回りに飛び回る。
それらが、ものすごい勢いで伸びているので、随分と7月に較べると草がひどい。
沢の中では、ダイモンジソウ、タチアザミ、ナンブアザミ、チョウジギク、が競って咲いている。
特に、この沢ではチョウジギクがやたら多い。
この夏、雨が少なかったのか、沢の水も少ない。
しばらくすると、この間引き換えした地点まで来た。
この奥には、やはり登れない滝がある。
沢の右岸に取り付き、ミズナラの小木に赤布を付け、巻きながら登る。
潅木と草付の間あたりを捲いていると、鉈目とオレンジ色のテープの落ちたものを発見する。
一瞬喜々とし、その痕を辿る。しかし、すぐ大藪とヌマガヤの大草原に阻まれ、解からなくなる。
この上がもしかしたら、5月に豊栄の風太さんと下った道に乗るのではないかと期待したが、
結局解からない。
30分ほど、草付のヌマガヤ草原と潅木の藪をとんでもない事を考えながら、ぼーっとし、徘徊する。
いつまでも、解からない道を探してもきりが無いので、一旦沢に下ることとした。
沢は、どうやら難所は過ぎたようで穏やかな勾配となっている。
たいした標高差も稼げず、しばらくは単調な沢を登っていく。
沢やさんには、物足りない沢であろう。
 今日は本来、目的も無しにここに来てしまっており、特別山頂を目指そうとか、
何処まで行こうとか全く考えていない山であった。
しかし、徐々に水量も少なくなってきており、
「もしかしたら、前毛猛山の頂上まで行けるかもしれない」と色気が出てきた。
沢は、岩が無くなり、しっとりとした空間に変化してきた。
山の中の小沢特有の、カメバヒキオコシなどのシソ科の植物が繁茂し、スゲ類が混ざり始めている。
岩すじには苔が生え、湿気を伴っている空間がある。
腹もすかないが、12時近くになったので、飯を食うことにする。
全く食欲が無く、半分くらい食ってザックにしまう。
しばらくして、沢の水は全く無くなり、沢が幾分分かれたようになった。
どっちを歩こうか迷うが、なるべく歩くスペースが広い方を選択。
さらに登ると、鬼が面山山塊のマイクロ中継局や南岳が見えるようになってきた。
沢特有の石が消え、変わってスゲのみとなる。
スゲの間に所々雑木が生えた部分を狙って歩く。
上部の方がかなり明るくなって見えてきた。
それと同時に、強烈な藪となる。
よく見ると藪の中に凸凹が有り、大昔の道のような痕跡も有るようだ。
この大藪で、帰り道を失ったらアウトと思い、鉈目を入れたり赤布を結んだりして用心する。
やがて、目の前に巨岩が現われた。
巨岩の脇には木が少ないので、そこを通る。
ベニサラサドウダンやアズマシャクナゲが、雪の為か幾何学的に枝を付け実に歩きにくい。
山頂はすぐそこか?
あたりを見ると、毛猛の稜線も近くなってきており、六十里越峠の稜線も繋がっている様だし、
ほぼ前毛猛山山頂であろうと確信する。
5月の山頂と比較すると、一介の低山の手入れされていない山頂に見える。
しかし、思いがけず、変哲も無い日に良い山に登れた充実感が有った。
帰りが心配なので、そそくさとデジカメで撮影し、下った。
取りあえず、下りは稜線歩きをしてみた。
ところが、5月と違い、恐ろしいほど藪がひどく、来た道を折り返した方が得策であろうと下山コースを変更。
途中で少し間違えたりしたが、割とスムースに沢まで下った。
30メートルのナメ滝の所までは、およそ1時間ほどで着いた。
面倒くさいので、なるべく滝よりを捲いて下った。
ヌマガヤしかないが、沢山握っていれば、割と強度は有りそうだ。
最初の滝の所に着いて、しばらくデジカメなどで撮影して休んでいたら、
「ちょっと登ってみようか」という気になってきた。
水も少ないし、上半身が濡れることも無かろうとザックを置いて登り始める。
さすがに長靴なので、大いに滑る。
何とか上まで登り、再び捲き道を下った。
荷物を持ち、約2時間で車の所に着いた。

珍しいタムラソウ 傷心の大雲沢
測量跡の山頂 山頂直下の奇怪な岩
大鳥沢途中のミニ釜


大鳥沢入り口9:25  前毛猛山山頂12:55  大鳥沢入り口15:05  計5時間40分
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