4月20日大川ガッチ(黒姫)

昨日の「御アタイ」から一夜空けて、本日の山行きは大川ガッチと言うことになった。
大川とは、破間川のことを指す。
破間川は、守門岳の袴腰、烏帽子山、黒姫の山塊から源流となって流れ出ている川で、「大川」はこの地区独特の言い方である。
今日は土曜日なので、最近成長著しい、地元建設業者勤務の直君が初山で参加した。
猟友会では、最も若く、33歳くらいである。
ムジナ沢橋を渡ったばかりの所に車を止め、旧道に降りて、黒姫橋をわたる。
雪は所々溶け始めており、コンクリートを歩く部分が多くなる。
しばらく歩くと、水源涵養林の杉林となる。通称「タモ平」である。
ベテランの面々は、適当に腰を降ろし、下黒姫沢の斜面を覗き始める。
下黒姫沢に入ると、随分と雪が溶けており、沢が数箇所開いていた。
まだ午前中であった為、川の水はそんなに多くはなく、十分にわたれる。
2か所ほど、沢を渡れば、後は、十分な雪が沢に残っている。
後ろを振り返ると、地元のMさんが、テレマークスキーで、最後の黒姫の滑走をしに歩いてきた。
「今日で、黒姫は終わりだな」と話しながら、我々を追い越して行く。
正面には、下黒姫沢の真沢が見えてくる。
左手には、エラオトシ沢と下黒姫沢をはさむ、ダイナミックな尾根を見ることができる。
今年は、この雪も落ちることなく、消えてゆくのだろう。
皆で休憩し、下黒姫沢右岸斜面を確認する。
副リーダーのHさんが、いつも先頭で歩くが、今日は下黒姫沢の真沢を詰め始めた。
山スキーで登るときには、上黒姫沢の左岸斜面を眺めながら登るのであるが、やはり、ここはシシ山だから、沢筋のへど部を通過しているのだろう。
Hさんの指示で、なるべく声を出さぬように指示が出される。
しばらく、シシウオッチングの時間が、とつとつと流れる。
誰からともなく、「いごうや」と声が発せられる。
しばらく登ると、山スキーで言う、上段に取っ付く。
ここで、数人づつの小隊となり、分割して山を見て歩くことになった。
私とHさんは、一番高い所から眺めようということになった。
足に自信がない人は、この上段部で、上黒姫沢のシシのヤスの付近を捜索するという段取りだ。
その他の人は、エラオトシ側の斜面を眺めたりする為、左手の尾根に取っ付く。
この頃、総リーダーのMさんは、左沢から入り、田代平方面へ向かって既に歩いていた。
破間川源流部分を四方八方から、眺めようと言う計画であった。
私とHさんは、駒の神から黒姫の稜線目掛けてもくもくと歩いてゆく。
九十九折にしながら、木の棒をピッケル代わりにしながら、歩いて行く。
この、木の棒は、ピッケル代わりになったり、射台に早代わりしたりするので、大たいがシシ山では皆持参するグッズだ。
跳りょう部は、天気が良かったがやや風があるようだ。
私は、昼飯にしたかったが、Hさんは早速双眼鏡を取り出して、眺め始める。
しばらく昼食を摂ったり、Hさんから地形を学んだりしながら、時を過ごす。
もう少し、源流部を確認するために、駒の神側に移動し、眺める。
下部で眺めている人たちも、シシの気配はないようであった。
総リーダーのMさんからの連絡も、シシの気配はないものとの連絡が入る。
Hさんは、総リーダーのMさんに、「スダレ上」まで行ってくる、と連絡していた。
黒姫山頂より、やや下った所に、スダレ状に岩場が存在している個所が有り、それを「スダレ」というらしい。
思いがけず、栗姫山頂まで来る機会に恵まれた。
 ここぞとばかりに、私はHさんにいろいろと質問する機会に恵まれた。
事細かに、丁寧に説明してくれるが、情報があまりにも多すぎて、1回ではなかなか覚えきれない。
黒姫の対岸には、田代山や、田代平が見え、その辺を重点的に眺めていく。
黒い物体は有るには有るが、動かないので同定は出来ない。
午後3時を過ぎた頃、風も強くなり、震えが生じるほど寒くなってくる。
Hさんは、「気配がねえなあ」とつぶやき、総リーダーの指示を仰ぐ。
総リーダーのMさんから連絡が有り、「今日は気配がねえから引き上げよう」と連絡が有った。
私とHさんは、ホテル大自然から真っ直ぐに尾を引いている、上黒姫沢尾根を直接下ることにした。
「昔は、守門岳山頂から烏帽子山、鞍掛峠、田代山、早坂尾根をぐるりと1周し、鳴りながらシシ山をしたものだ」と聞かされる。まさに、先人の山歩きは今から考えると壮絶だが、その当事はごくスタンダードな猟法であったに違いない。
 上黒姫沢尾根を下り始めると、ニホンカモシカが尾根筋にたたずんで、じっとこちらを見ている。
ニホンカモシカの居る位置の直ぐ近くに、大分古いが、シシの糞が落ちていた。
総リーダーから、「俺も引き上げる」という連絡が有り、しばらく、Hさんと総リーダーが連絡を取り合っている。
「1つ、漏斗がぬげっとう」と言っている。
はて、何のことなのか?直ぐ質問するのも、芸がないので、しばらく考えてみる。
「ついさっき、クマの糞を見つけたが、そのことなのか?」・・・糞が、じょうご?・・・。
確かに、漏斗が抜けていたと言うことなのだ。
冬眠明けのシシは、まず糞をし、腸内の汚れを落とすからだ。
いままで、猟言葉に関して、自分が如何に無関心であったか、恥ずかしく思う瞬間でも有った。
あまり、しつこく質問しても、申し訳ないので、いろいろ工夫してHさんから教えてもらいながら、上黒姫沢を経由して、再び下黒姫沢に合流した。
車の所に、皆既に到着して、我々を待っていてくれている。
「後、一週間だなあ」
まだ、シシ山には、1週間早いと言うことらしい。
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